冠詞4 事物全般「事物全般」を表すとき冠詞の使い方でややこしいもののひとつは「ある事物全般について述べる場合」である。 たとえば「ネコは寝るのが好きだ」という文を考えよう。もちろんこの場合は特定のネコではなく、「ネコというものは」ということがいいたい。 一番一般的なのは、 (1) Cats like sleeping. のように、名詞を複数形にして使うことである。可算名詞でも複数形の時は冠詞がなくてもいいので、これが成りたつ。 また (2) A cat likes sleeping. のように、不定冠詞をつけて単数形で表してもいい。 (1)の場合は当然、あちこちにいる様々なネコたちはどれもこれも、というニュアンスだし、(2)の場合は「そのうちの1匹を例えばとりあげてみても」というようなことになるのだ。 ところが (3) The cat likes sleeping. もありうる、とされている。 この場合、具体的なネコという生き物が頭に浮かんでいるというよりは、 「いわゆる、ネコという名前や概念で呼ばれるモノは」 のように、非常に抽象的なニュアンスになっているのである。あなたも私も、ネコって生き物がいるってのは知ってますよね、そのネコってやつは…みたいな感じ。 ただし、The cats ~と、定冠詞に複数形可算名詞では「事物全般」を表すことはできない。本来なら必ずしも冠詞をつけなくていい複数形名詞にtheをつける、ということは、「特定したいから」ということに他ならないわけで、どうしても「彼の飼っているあのネコたちは」のように特定のものを表すことになってしまう。不可算名詞についても事情は同じで、一般には冠詞なしでmusicといえばよく、the musicなどと言えば特定の音楽を指すことになる。 もちろんThe catも普通は特定の単数のネコ一匹を指す方が多いだろう。 「The+単数形の普通名詞」によって事物全般を指すのは「科学・技術などについて述べるときの堅い表現によく用いられる」と文法書にある。 上記の(3)について述べたように、「抽象的なニュアンス」があるからというのがその理由だと思うが、とくに科学技術などについては、それが出てきたときに、人々の話題となり、それに言及するときは「例の」「いわゆる」という意味の冠詞をつけたい「キモチ」になってしまう、と考えてもいいかもしれない。 The cellphone is one of the greatest innovations for modern people. (あのいわゆる)携帯電話(というモノ)は現代の人間にとって最大の革新の1つである。 例外(と見えるもの)のひとつに、「映画に行く」というときの映画がある。 「映画に行く」はgo to a movieか、go to the movies かのどちらかとなる。上の説明で行けばむしろ、go to movies となりそうなものだが、それは使わない。その理由はいまのところ私には説明できないのだが、ことによるとそもそもmovieとはもともとは「moving pictures」すなわち「動いている何枚もの絵」(フィルムにはいくつものコマ、すなわちいくつもの絵がある!)の略であって、それが「1本の」映画となってもmovies と表された、のかもしれない。つまり映画全体としてはmoviesでも「単数」みたいな概念だったのである。その上で、「あのいわゆる映画ってやつ」と人々の話題に上る。…というわけでthe movies。これは私の勝手な推測だが、当たっていたりしないかな? 前へ 次へ |